トランプ米政権が日本との貿易交渉で、自ら離脱した環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)の成果にただ乗りするような主張を強めている。日本に対して農産品の関税削減を求める一方、日本からの輸入自動車に課す関税を撤廃することには難色を示す。閣僚協議を重ねても譲歩の兆しはなく、日本は対応に苦慮している。
4月の交渉開始以来、3カ月連続で4回もの閣僚協議をこなしてきた茂木敏充経済再生担当相。今月13日の協議終了後、日本の工業製品に課されている関税の撤廃見通しを記者団から問われ「(米国に)要求はしている」と短く語るだけだった。
TPPは昨年末に発効。離脱した米国は、日本への農産品輸出をオーストラリアなどTPP参加国と競う上で不利な条件を強いられている。日本としては、トランプ大統領が来年の大統領選に向けて実績づくりを焦っていることも交渉上優位に働くとみたが、期待とは裏腹に米側は「TPPの良いところ取り」(日本の経済官庁幹部)の姿勢を強めているという。
ライトハイザー米通商代表は「数十年にわたって貿易赤字を放置してきた」と日本批判を繰り返している。閣僚協議の場では、TPPで日本に約束した自動車など工業製品の市場開放に応じず、日本に農業で一方的な譲歩を求める考えを披露したとされる。日本の交渉関係者は「米側は相手国から成果をむしり取ることしか考えていない」と憤る。