既に削除されたが、5月に示された報告書案で、公的年金の給付水準について「今までと同等と期待することは難しい」などと“公助”の限界を認めるような記述があったことも、批判の呼び水になっている。
しかも影響は報告書にとどまらない可能性がある。金融庁は昨年度の税制改正要望で、老後に備えた資産形成を助ける少額投資非課税制度(NISA)について、投資できる期間の制限撤廃を要望。実現しなかったが、今回の報告書の中でも税制改正の必要性を指摘しており、今年度も同様の要望が行われた場合、報告書の議論が再びぶり返す恐れもあるからだ。
報告書は撤回される方向だが、法政大学の小黒一正教授は「本質的な部分で金融庁が指摘したことに誤りはない。今後増加が予想される高齢者の貧困問題など、現実から目を背けずに社会保障制度改革などの議論を深めるべきだ」と話している。(蕎麦谷里志)