フィリピン各地の刑務所が、受刑者で過密状態になっている。平均して定員の4.4倍が収容され、中には20倍超の例も。もともと施設は足りていなかったが、ドゥテルテ政権が麻薬犯罪対策を進め、逮捕者が急増したことが背景にある。受刑者は劣悪な環境に置かれており、刑務官からは「十分な更生が期待できない」と不満が漏れる。
「皆怒りっぽく」
首都マニラにあるナボタス刑務所。3月に施設が増設されるまで適正収容人数は38人だったが、2月現在では18~70歳の男945人が服役し、超過率は全国トップを独走していた。
3つある雑居房は長さ約30メートル、幅約2メートルの通路の両脇にある。1室8人程度が利用すべきところ、約160人がすし詰めにされ超満員だ。通路の天井に設置された大型扇風機1台が、狭い空間に充満した汗の臭いと男の熱気をかき回していた。
雑居房の写真撮影は認められなかったが、中をのぞくと、多数の目が一斉に記者の方を向いた。囚人服の黄色いTシャツを着た男たちが黙って膝を抱えて床に座り、身動きもしない。房内ではスペースが足りず、夜間は外の通路に寝たり、ハンモックをつるしたりしているという。日中は教会のボランティアの講話を聴くなどして過ごす。