海外情勢

「オーバーツーリズム」世界で頭痛の種 受け入れ能力超える観光客 (1/2ページ)

 日本を訪れる外国人旅行者は増加の一途で、昨年は3000万人を突破し過去最多となった。だが観光客が過剰に集中し、住民の生活には支障も出始めている。受け入れ能力を超える観光客が押し寄せる「オーバーツーリズム」の問題。各国の取り組みを探った。

 入場税を徴収し混雑緩和 ベネチア「まるで遊園地」

 「水の都」として名高いイタリア北部ベネチアは長年、オーバーツーリズム問題と向き合ってきた。増加するマナーの悪い旅行者が街の景観や生活を破壊していると住民らは主張。市は「観光と暮らしの共生」を目指し、旅行者から“入場税”を徴収して混雑緩和を図ることを決めた。

 エメラルド色の運河をゴンドラが巡り、華やかな仮面や衣装を身に着けた人々が行き交う。カーニバル(謝肉祭)がひときわ大きな盛り上がりを見せた2月下旬、中心部のサンマルコ広場は観光客らで埋め尽くされた。旧市街の人口約5万人に対し、謝肉祭が最高潮を迎える日は例年、広場に4万人超が集結。市は昨年から広場への入場を2万人前後に規制し始めた。それでも橋には旅行者があふれ、路上にごみが散乱した。市への年間訪問者は2800万人に及ぶという。

 「たくさんあったパン店や雑貨店は土産物店に変わってしまった」。規制の必要性を訴える団体の広報担当者、トッマーソ・カッチャリさん(42)が嘆く。

 1987年には世界遺産に認定、観光客は増え続け、2017年の宿泊客数は500万人を超え05年比1.6倍に。賃貸アパートの宿泊施設への転用や家賃値上げが相次ぎ、退去を余儀なくされる住民も続出。この数十年で人口は3分の1になったとの統計もある。

 行政側も手をこまねいていたわけではない。景観保護や治安維持のため1987年に条例を制定、繰り返し改正してきた。ポイ捨てや路上での寝そべりを禁止し、違反者には最大500ユーロ(約6万3000円)を科す。人口減への対応として市所有の空きアパート360世帯分の補修も進める。

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