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米中対立、製造業への打撃鮮明 日銀は現行政策を粘り強く維持の構え

 日本銀行が8日公表した地域経済報告(さくらリポート)では3地域で景気判断が下方修正され、製造業を中心に米中貿易摩擦の打撃が鮮明になった。景気対策などの効果で米中双方の景況感は足元では改善しているものの、米中対立は早期打開のめどが立たず経済を輸出に依存する日本には逆風が続く。ただ、日銀は年後半には景気が上向くとの従来の見方を維持しており、現行の金融政策を粘り強く維持する構えだ。

 日銀が8日、4月のさくらリポートを公表し、全国9地域のうち東北、北陸、九州・沖縄の3地域で景気判断を引き下げた。3地域の引き下げは2013年1月に8地域を下げて以来、6年3カ月ぶり。9地域全てで海外経済減速の影響を指摘する声が上がり、米中貿易摩擦の長期化が幅広い地域で影を落としていることが浮き彫りになった。 「工作機械向け部品の生産は、中国での設備投資需要の減少で前年比30~40%の大幅な減少となった。当面持ち直しは期待できない」(山梨県の非鉄金属)

 リポートでは、こうした海外経済の減速影響を指摘する声が全9地域で上がった。今月発表した企業短期経済観測調査(短観)や生活意識アンケートでも大企業製造業や個人の景況感がそれぞれ6年3カ月、3年ぶりの悪化幅となっており、海外発の景況感悪化が改めて裏付けられた形だ。

 一方、日銀は「内需は堅調で、外需も足元では弱いが年後半、年度後半には持ち直しに向かうというのが一般的な見方だ」(山田泰弘大阪支店長)と強気の姿勢を崩さない。中国政府の積極的な財政政策に加え、高速大容量の第5世代(5G)移動通信システム関連の需要増を見込み、経済指標は年央まで鈍化してもその後持ち直すとみている。

 懸念された2大経済大国の景気減速もひと息ついた。中国は景気対策の効果で景況感の指標が改善され、3日の上海株式市場は1年ぶりの高値水準だった。米国も米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げ休止などで株価が回復している。

 とはいえ、5日終了した米中の閣僚級貿易協議は、両国の景況感改善で妥結の機運が薄れ、大きな進展はなかった。市場が期待する通り交渉が進展する保証はない。

 景気の現状は、同様に中国経済が不調だった2016年を想起させるとの指摘もある。政府が消費税増税を延期し、日銀もマイナス金利を導入するなど異次元緩和の軌道修正を余儀なくされた年だ。

 今後の経済指標がさらに悪化した場合、日銀がどこまで泰然自若を貫けるかは予断を許さない。(田辺裕晶)

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