電力小売りの全面自由化から間もなく3年を迎える。大手電力会社の地域独占を排除し、料金やサービスの競争を促す狙いだが、電力需要が大きい大都市圏を中心に新規参入が活発化している。2年前に始まったガス自由化も加わり、電力やガスの事業者だけでなく、通信や石油元売りなどが入り乱れた激しい顧客獲得競争を繰り広げている。(産経新聞論説委員・井伊重之)
一方で自由化をめぐる課題も浮き彫りになってきた。それは電力の安定供給をいかに確立するかである。昨年夏には大型台風に直撃された西日本地域で停電が頻発したほか、同年9月に北海道でブラックアウト(全域停電)が発生した。災害大国・日本で電力を安定的に供給する重要性は高まるばかりだ。
だが、電力業界の競争が加速すれば、安定電源を確保するための設備投資や送配電網の維持・管理などに支障が出かねない。普及が進む太陽光発電でも、買い取り期間が終了した後の再投資に懸念が残る。自由化一辺倒の制度設計の見直しを含めた対策が急務である。
家庭向けの電力小売りが全面的に自由化された平成28年4月以降、新電力に契約を切り替えるだけでなく、同じ電力会社で料金プランを変更する動きが広がっている。昨年11月の切り替え率は全国平均で22%に達し、欧州の水準に近づいている。電力自由化は一定の成果を挙げつつあるといえる。