燃料電池車、620万台量産へ 韓国が行程表 40年までに3000倍

水素燃料電池車に試乗する韓国の文在寅大統領=2018年2月、ソウル(聯合=共同)
水素燃料電池車に試乗する韓国の文在寅大統領=2018年2月、ソウル(聯合=共同)【拡大】

 韓国の文在寅政権が水素で走る燃料電池車(FCV)のシェアで世界首位を目指すとした「水素経済活性化ロードマップ(行程表)」を発表した。2040年までに現在の3000倍を超える620万台を量産し、国内に1200カ所の水素ステーションを設置する計画。支持率が伸び悩む中、雇用や景気拡大につながる成長戦略としてアピールする狙いもある。

 「政府の意志は固い。エネルギーシステムを根本的に変え、新たな成長の動力を生み出す絶好の機会」。文大統領は1月、南東部蔚山で開かれたロードマップの発表式典で「エネルギーを石炭と石油から水素に変える産業構造の革命的変化だ」と力説した。

 燃料電池車は、タンクに充填された水素と、空気中の酸素の反応で発生する電気でモーターを駆動する。二酸化炭素(CO2)を出さず、走行時には水しか排出しない。

 充電が必要な電気自動車(EV)と異なり、水素をタンクに充填する時間は数分程度ですみ、走行距離も長い。日本は16年公表のロードマップで、30年までに燃料電池車80万台程度の普及を目標に掲げている。

 聯合ニュースによると、車両価格が高額でEVと比べ加速力なども劣るとして「事業本格化は大きな冒険」(投資証券会社)との慎重論も韓国内で聞かれるが、関連の株は値上がり。今後の展開への期待感も膨らむ。

 温暖化対策の切り札としてだけでなく、韓国は微小粒子状物質「PM2.5」による大気汚染対策を迫られていることもあり、ロードマップにはクリーンな発電手段として、燃料電池自体の普及も盛り込まれた。

 40年までに輸出分を含め1500万キロワット以上に相当する燃料電池の生産を目指す。韓国が擁する原発24基の設備容量が2250万キロワットあり、脱原発を掲げる文政権は代替エネルギー源としても野心的な目標を掲げた格好だ。

 文大統領は昨年2月、現代自動車の水素燃料電池車に試乗。「1回の水素充填でどれくらい走行できるのか」と尋ねる場面もあった。別の機会に、自らを燃料電池車の「広報モデル」と称したこともあり、技術への期待をにじませる。(ソウル 共同)