東京電力福島第1原子力発電所事故を教訓に策定された新規制基準のもと、再稼働した国内の原発は5原発9基にとどまる。昨年7月に改定された国のエネルギー基本計画では、原発を引き続き重要な電源として使う方針を示しつつも、焦点の建て替えや新増設には踏み込まなかった。海外への輸出案件も相次ぎ頓挫。原発を取り巻く状況は厳しさを増すばかりで、「国が原発の建て替えに言及しないことが最大の問題点」との指摘も上がっている。
今年はゼロの公算
「原発が定着して、しっかりと経済・社会を支えるところまで至っていないと思う」。東日本大震災と福島原発事故から8年が近づいていた2月の記者会見で、電気事業連合会の勝野哲会長(中部電力社長)はこう述べた。
再稼働した5原発9基は福井県以西にあり、原子炉の種類は全て「加圧水型(PWR)」と呼ばれるものだ。事故を起こした福島第1原発と同じ「沸騰水型(BWR)」や東日本での再稼働は現時点でない。昨年4基が再稼働したの対し、今年は新たな再稼働はゼロの公算が大きい。
電力各社が再稼働を目指す上で、原子力規制委員会の審査に合格しても、地元同意の取り付けは一筋縄ではいかない。福島原発事故で世間の原発に対する見方が変わったためだ。安全対策工事の長期化や費用拡大の可能性もぬぐえない。