中国人にとって、一年で最も重要なイベントである春節(旧正月)が終わった。春節期間中の各種データが発表されているが、中でも大みそか夜に放送された中央テレビ特別番組「春節聯歓(交歓)晩会」、略して「春晩」の視聴者数がすごい。春節の過ごし方は変化しても、家族とともに「春晩」を見るという習慣は、廃れていないようである。(ノンフィクション作家・青樹明子)
中央テレビの「春晩」は国内239のテレビチャンネルで同時放送され、加えて海外162カ国・地域でも放送された。中国国内では、前年比約4200万人増の11億7300万人が視聴したという。(人民日報日本語版)
数字からも分かるように、春晩の影響力はすさまじい。番組で精彩を放ったスターは、よりビッグになり、注目されたせりふは即流行語になる。
中でも毎年話題になるのが「小品」と呼ばれるコーナーである。お笑いを基盤にした15~20分ほどの寸劇で、トップクラスの喜劇役者をはじめ、映画やテレビで大人気のスターたちが登場する。出演者ばかりではない。小品が人気の理由は、折々の中国の世相を映し出していることだろう。
ここ10年ほど、小品で取り上げられたテーマは「夫婦・家庭関係」が最も多かったが、今年2019年は「職場の人間関係」に重点が置かれていた。職場をテーマにした小品は今年4つあり、高視聴率を記録したのは上司と部下の人間関係をコメディー化した「オフィス物語」である。また今年の特徴として、世相を批判する内容のものが、十年来で最多だったことがある。「称賛」と「批判」という2つの角度から捉えると、2019年は称賛するものが2つに対し、例年1つか2つだった“批判組”はなんと5つだった。