■中国への批判、理解し難い
米中摩擦の争点に知財問題が挙げられている。日本企業など向けに中国のハイテク産業開発の動向調査や機関連携支援などを行う技術経営創研の張輝社長に聞いた。
--欧米の研究開発現場に参加した優秀な中国人研究者の知見が中国で使われているとの懸念の声がある
「トラブルを聞いたことはほとんどない。特許や営業秘密など知財の発生や保護については(当事者間で)明文化された誓約書などがきちんと結ばれているからだ」
--今後、広い意味での知財活動である国際的な特許ライセンスや買収、技術移転、技術者スカウトなども、米国政府が中国企業を問題視する可能性はあるか
「トランプ米大統領の行動を予測することは難しいが可能性は低い。万が一そうなっても、限定された分野だと思う。オープンイノベーションは現代の企業に不可欠な知財活動だ。既に中国企業の技術力は高く、米国でダメなら米国以外で連携先を考えるのでは」
--米国第一主義に対し中国が挑戦している構図だが、今後、日本第一主義も必要になるのでは
「米国は自国産業を立て直すため保護貿易推進を主張しているが、中国も日本も自由貿易を推進する国であり自国第一主義ではないはず。例えば中国製造2025はドイツ発のインダストリー4.0を参考にした単なる産業政策に過ぎない。なぜドイツ発が良くて、中国発が批判されるのか、理解が難しい。産業に付随する知財活動でも、(中国は他国と)同様に活動をしているだけだ」
--では、国として日本がとるべきスタンスとは
「米国はこうだから日本も、とはならぬよう、日本としての考えをしっかり持つことが大事だと思う」
--日本の企業、研究機関、大学へ助言することは
「知財の観点では新しい問題があるわけでも、従来の問題がひどくなったわけでもない。中国での知財保護環境や外国企業への技術保護が一層進むことは明確だ。例えば中国は現在、行政的な手段で技術移転を企業に強制することを禁止する外商投資法案を審議している」
--そういう情報はもっと公開されるべきでは
「知財の担当者や専門家は英語に訳された情報だけではなく、中国語の情報にもきちんと当たってみてはどうか。中国における情報公開は想像以上に進んでいる」(知財情報&戦略システム 中岡浩)