ドイツ政府が探る石炭火力発電所廃止に向けた「脱石炭」協議が難航している。石炭火力は二酸化炭素(CO2)を大量に排出するため、脱石炭が温暖化対策の鍵となるが、ドイツの発電量の4割弱は石炭と、石炭の一種でCO2排出量が特に多い褐炭に由来。環境保護派は石炭火力の即時廃止を訴える一方、褐炭産地は早急な政策決定に反対するなど利害が交錯する。
石炭火力への圧力は年々強まり、英仏などは脱石炭にかじを切った。世界最大の褐炭産出国ドイツも2030年までにCO2排出量を1990年比で55%減らすと表明し、石炭火力発電の段階的な削減を打ち出した。同国は2022年までの脱原発にも取り組んでいる。
ただ褐炭採掘は西部ノルトライン・ウェストファーレン州や東部ブランデンブルク州などの基幹産業で、関連業種を含む就業者は9万人に上る。
政府は18年6月、産地や産業界、環境保護団体の代表らで構成し、石炭火力発電の廃止時期や採掘終了後を見越した労働者の雇用確保策を18年中に取りまとめるとした「石炭委員会」を発足させた。
だが、代替エネルギー源などの問題が残る中、政府内の意見調整は進まないほか、産地から手厚い財政支援を求める声も上がり、答申は2月初旬に延期された。報道によると、メルケル首相が近く産地の州首相らとの直接交渉に乗り出す。
ノルトライン・ウェストファーレン州では、褐炭採掘が計画される土地の自然を守ろうと市民らが大規模な抗議行動を展開。一方、ブランデンブルク州のウォイトケ州首相は、地元メディアに労働者の雇用の保証を訴え「脱石炭は今後20年はあり得ない」と語った。(ベルリン 共同)