国連総会が昨年12月19日、移民保護などを目的とする初の国際枠組み「安全で秩序ある正規移住のためのグローバルコンパクト」(国際移民協定)を支持する決議を採択した。移民対応は地球温暖化対策と並び、国際協調が不可欠な課題だ。だが、米国だけではなく、欧州でも参加拒否が続出。「一国主義」やポピュリズム(大衆迎合主義)が多国間主義を揺さぶっている。(宮下日出男)
「全員の利益」
「移民は人類の歴史に刻まれた現象。全員の利益になるよう協力し、互いに学ぶ機会となる」。国連総会のエスピノサ議長は、採決に先立ち、移民協定の意義をこう説いた。
国連によると、世界の移民は現在2億5800万人で、総人口の3.4%を占める。2000年から約1.5倍に増えたが、難民と異なり、扱いを定めた取り決めはなかった。協定は法的拘束力を持たないが、各国の指針のような位置づけとなる。
協定は30ページ余りで、23項目の目標を掲げている。無秩序な不法移民を抑制する一方、労働力不足を補う点からも柔軟な正規移住の道も確保。移民への差別撤廃に努め、移住や帰還を含めて受け入れ国や出身国など関係国の協力を促した。
協定の議論は、欧州で難民・移民の大量流入が問題化したのを受け、2016年に始まった。欧州連合(EU)は当時、団結できず、各国が個別対応をとり、混乱が拡大。地中海では渡航中の移民に多くの死者が出た。協定にはそんな欧州の反省と経験も読み取れる。