フィリピン、進まぬ排水処理施設の整備 新生ボラカイ島、見切り発車

道路の拡張工事のため切断されたフィリピン・ボラカイ島民家=2018年10月(共同)
道路の拡張工事のため切断されたフィリピン・ボラカイ島民家=2018年10月(共同)【拡大】

  • フィリピン・ボラカイ島のビーチに並べられた排水処理用のパイプ=2018年10月(共同)

 工事中で未舗装の目抜き通りを車やトライシクル(バイクタクシー)が通るたびに粉塵(ふんじん)が舞う。廃虚のような建物が目につき、そこかしこに茶色い水たまりも。以前取材した政府軍とイスラム過激派の戦闘で荒廃した町に似ていなくもない。

 フィリピン中部のリゾート地、ボラカイ島が昨年10月、観光客受け入れを再開した。排水が海に流されるなどの環境汚染を懸念したドゥテルテ大統領が昨年4月、強権を振るって閉鎖させていた。半年間、排水処理施設の整備や道路工事を進め、満を持して観光客を迎え入れるはずだったのだが…。

 閉鎖前、汚水が海に直接流されていた東海岸に行ってみた。排水処理施設の工事は全く終わっておらず、大量のパイプがビーチに並べられていた。近くに座っていた作業員にいつ完工する予定か尋ねると「分からない」と笑顔で即答された。

 海岸沿いには、道路の拡張工事のためケーキのようにすぱっと切断された民家もあった。ビーチの前に、中が丸見えの家が無残な姿をさらしているのは不思議な光景だが、家主の心情を想像すると笑うに笑えない。

 新生ボラカイ島は受け入れ準備が間に合わず、見切り発車で再開したように思える。ただ環境保護はもちろん重要で、そのための努力は奨励されるべきものだろう。環境と観光の調和が取れた発展は理想的でもある。

 閉鎖で失業した数万人のうち復職できたのは一部にとどまり、問答無用の閉鎖というドゥテルテ流の荒療治には賛否ある。しかし既に大なたを振るった以上、時間がかかってもリゾート地の模範になってほしい。そうでなければ、中が丸見えの家も浮かばれない。(ボラカイ 共同)