ジェトロ 2019年のBRICS経済を占う(3-2) ロシア…プラス成長持続 インド…国民の生活向上 (2/2ページ)

ロシア東部地域への投資促進を図る国際会議「東方経済フォーラム」に出席したプーチン大統領=2018年9月11日、極東ウラジオストク(AP)
ロシア東部地域への投資促進を図る国際会議「東方経済フォーラム」に出席したプーチン大統領=2018年9月11日、極東ウラジオストク(AP)【拡大】

  • 2018年10月に来日したインドのモディ首相=東京都内(AP)

 しかし、20年以降の経済成長見通しは20年2.0%、21年3.1%、22年3.2%、23年および24年は3.3%と策定、投資および消費の拡大などにより3%程度の安定成長が続くとみている。

 11月下旬の投資フォーラムに出席した大統領は、自国経済について、安定してはいるものの国民生活を大きく改善する水準にはなく、国家目標を達成するためには、非資源分野の生産性の向上、国内インフラ整備への集中投資、デジタル経済の成長促進に重点的に取り組むとともに投資誘致を図るためのビジネス環境改善を継続すると述べた。

 世界銀行「ビジネス環境ランキング」の最新版では、ロシアは190カ国・地域中で31位(日本39位)と日本を上回るまでに順位を上昇させた。

 原油価格の動向、欧米からの経済制裁などさまざまな問題を抱える中、国家目標を達成するために具体的な成果を出すことが国民からも強く求められている。(ジェトロ・モスクワ事務所長 野村邦宏)

                  

 インド 国民の生活向上に注力、控える総選挙

 2018年のインド経済は、16年11月の高額紙幣廃止、17年7月のGST(物品・サービス税)導入の中で成長が鈍化した前年から順調に回復。国内総生産(GDP)成長率は政府予測で7~7.5%と高い水準となりそうだ。19年も資源価格や通貨安といった懸念はあるが、経済成長の阻害になりそうな大きな要因はみられない。

 一方、19年に実施される総選挙が今後のインド経済の方向性を決めると言ってよいだろう。総選挙は5年に1度実施される。この総選挙でモディ政権が国民の信任を得るか否かが、改革志向の経済運営の継続性の決め手となる。

 インドの総選挙は与党不利とされる。有権者の大宗を占める中所得以下の層には経済成長の果実、実感は届きにくい。政治や経済運営への不満から、これらの人々が野党支持に流れる、という構図だ。29州が一定の権限を持つ連邦制度を敷くインドでは、州首相、州議会は選挙で選ばれるが、選挙日程は統一されておらず、州選挙の結果がその時々の政権強度の指標となっている。14年に発足したモディ首相率いるインド人民党(BJP)政権は、16年、17年には多くの州選挙で圧勝、さながらオセロゲームの様相をみせていたが、18年に入ってその勢いに陰りが出てきている。12月に結果が出た5州の選挙は、この傾向が如実に示された格好となった。

 最近、モディ首相は「生活の質の向上」という言葉をよく使う。国民各層が豊かさを実感できるようになることが経済や政権運営の最優先課題だからだ。18年度(18年4月~19年3月)の政府予算では、新たな国民医療保険制度を導入。これは低所得層家庭を対象に、1世帯当たり年間最大50万ルピー(約80万円)の医療費を負担するもので、1億世帯が裨益するといわれる。このほか、農産品買い取り価格制度の充実や農林水産部門への金融支援の拡大など、国民の半数を占め、低所得層が多い農村部への配慮がにじむものになった。

 インドは、世銀の「ビジネスのしやすさ」ランキング2019で前年より23ランク上昇の77位となった。このお披露目の席でモディ首相は、政権発足後、ランキングの項目に限らず、汚職防止、GST導入、倒産法整備、起業促進などの大改革に取り組んだ、と誇らしげに語った。同時に、今年から郡(ディストリクト)レベルでのランキングを導入し、その指標に1人当たりGDPを導入するとした。地域レベルの行政改革を草の根レベルの所得向上にひもづけることで、経済発展を目指す狙いとみられる。

 国民生活向上を重視した政策にプライオリティーが置かれるなか、経済社会インフラ、サービス、FMCG(日用消費財)、医療など、関連ビジネスの機会拡大も期待できそうだ。(ジェトロ・ニューデリー事務所長 仲條一哉)