金融市場が大荒れである。東京株式市場の日経平均株価が2万円の大台を割り込み、1年8カ月ぶりの安値を付けた。
世界的な景気の減速懸念が背景にあり、米国発の株価急落が世界に波及した動きである。
バブル崩壊後の最高値を記録した10月から2カ月余で、5000円超も株価が下落した。これほどの勢いで値を下げると、企業や家計の景況感も急速に悪化しかねない。
足元の景気は企業収益改善などで緩やかな回復を続けており、直ちに政府の対策が必要な状況にはない。だが、景況感悪化が設備投資や消費などの実体経済に本格的に及ぶなら、そうもいくまい。警戒を怠らず、潮目の変化を見極めて適切な手を打つ必要がある。
東京市場の株価下落は5営業日連続で、下落幅は1000円を超えた。また、外国為替市場でも急速に円高が進んだ。
やっかいなのは、もっぱら海外要因で市場が揺らいでいることである。もともと、米中貿易摩擦などの影響で来年以降の世界経済の成長が下押しされるリスクが意識され、このところの株式市場は下落基調を強めていた。
問題は、ほかならぬ米国が混乱に拍車をかけていることだ。例えば、先週の米国株価下落につながった米連邦準備制度理事会(FRB)による利上げである。かねてトランプ大統領はFRBの利上げ路線を強く非難してきた。
FRBが経済動向を踏まえて最適な判断をすべきは当然だが、そこに不満があるからという理由で大統領がいたずらに影響力を行使しようとすれば、独立性を担保されたFRBの金融政策を分かりにくくするばかりである。
ムニューシン財務長官が市場の動揺を鎮めようとして、大手金融機関首脳やFRBなどと相次いで協議したことも、かえって市場の不安をかきたてた。さらにメキシコ国境の「壁」建設をめぐる与野党対立が解けず、政府機関の一部閉鎖が決まったことが政権運営への不信感を増幅させている。
いずれも丁寧さに欠ける政権運営が招いた結果である。それが米国はもちろん、日本を含む世界経済全体にとっても深刻な悪影響を及ぼしかねないことを、もっと厳しく認識してもらいたい。
むろん日本や欧州の各国は、市場の動揺を拡散させないよう米国との連携を密にすべきである。