今年も残り2週間となった。中国にとって今年最大の出来事は、米国との関係が非常に厳しいものになったことだろう。現在の米中関係を見る上で見逃すことができないのは、2017年12月に発表された米国の「国家安全保障戦略」(NSS)と今年1月に発表された米国の「国家防衛戦略」(NDS)と10月の米副大統領、ペンスの中国政策に関する演説である。(元滋賀県立大学教授・荒井利明)
NSSは、中国およびロシアについて、「米国のパワー、影響力、利益に挑戦し、その安全と繁栄を侵食しようとしている」と指摘し、「関与や国際機関への取り込みがライバル国を善意のアクターや信頼できるパートナーに変えるという仮定に基づく過去20年間の米国の政策は再考を迫られている」と述べている。つまり、クリントン政権以降の対中政策を否定し、新たな対中政策の必要性を強調しているのである。
米国は01年の9.11事件以降、テロリズムとの戦いを安全保障上の最優先課題としてきたが、NDSは、「現在、米国の国家安全保障における主要な懸念は、テロリズムではなく、国家間の戦略的競争である」と述べている。今や、「中国、ロシアとの長期的な戦略的競争が、国防総省にとっての主要な優先課題」になったというのである。
NDSは、「戦略的競争者」である中国は、「近い将来におけるインド太平洋地域での覇権を目指し、さらには将来、米国に取って代わり、地球規模で優位に立つことを目指して、軍の近代化計画を推進し続けるだろう」と述べている。