(左から)トランプ米大統領(ゲッティ=共同)、中国の習近平国家主席【拡大】
【ワシントン=塩原永久】米通商代表部(USTR)は20日、中国による不公正な取引慣行に関する調査報告書の改訂版を公表した。知的財産侵害に改善がみられず、「この数カ月は一段と理不尽な行動をとっている」と非難。日本へのサイバー攻撃にも触れ、同盟国と連携して厳しく対処する姿勢を強調している。
USTRは通商法301条に基づき、中国の知財侵害や外国企業に技術移転を強要する取引慣行を調査。3月に報告書をまとめ、制裁として計2500億ドル(28兆円)相当の中国産品への追加関税を発動した。
その後の動向を反映させた改訂版は、中国当局とのつながりも指摘されるハッカー集団「APT10」による米企業へのサイバー攻撃などの事例を挙げ、「中国は基本的に不公正取引を改めていない」と指弾した。
また、米情報セキュリティー会社による報告をもとにAPT10が日本企業にも矛先を向けていると指摘。日本政府が中国通信機器2社を入札から除外する方針との報道に触れるなど、日欧やオーストラリア、韓国といった同盟国に対する「中国産業スパイ」の脅威にも言及した。
USTRのライトハイザー代表は声明で「報告書の改訂は米政権による(中国の)監視や執行強化の取り組みの一環だ」と述べた。
トランプ米政権は中国と貿易問題で対立。USTRの改訂版公表は、11月末にも開かれる米中首脳会談に向けて対中圧力を強める狙いもありそうだ。