日中韓や東南アジア諸国連合(ASEAN)など16カ国が参加する東アジア地域包括的経済連携(RCEP)の首脳・閣僚会合が12~14日に相次いでシンガポールで開かれる。年内の実質妥結に向け、関税などの重要分野で大筋合意できるかが焦点だが、参加国間の溝は依然大きく、行方に暗雲が漂う。14日の首脳会合で妥結にこぎ着けられるか予断を許さない。
2013年から始まったRCEPの交渉では、関税削減や知的財産保護、電子商取引(EC)のルールなど約20の分野を対象に議論しており、これまでに政府調達など5分野で合意した。今回妥結した上で、来年の最終合意を目指すシナリオが想定される。
ただ物品の関税引き下げや知的財産保護などのルール整備に消極的なインドや中国と、高い水準の自由化を求める日本やオーストラリアとの間には開きがある。
参加国はトランプ米政権の保護主義的な通商政策への危機感を背景に早期妥結を目指すことでは一致しているが、交渉は難航している。
特にインドは中国製品がこれまで以上に国内市場に流入することに警戒感を強めており、年内の実質妥結に消極的だ。交渉関係者などによると、インドは関税引き下げなどの対象品目を減らすよう要求。10月にニュージーランドで開かれたRCEPの事務レベル会合では、年内妥結に反対の立場を示したという。
各国はインドとの妥協案を模索しているが、別の交渉筋は「(インドが)年内妥結にこだわらない姿勢は強い」と話す。
世耕弘成経済産業相は9日、閣僚会合への参加を発表し「現時点で予断を許さない状況だが、年内の実質的妥結を目指して各国としっかり取り組みたい」と述べた。
15~18日には、日中や米国など21の国・地域で貿易自由化を推進するアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議と閣僚会合がパプアニューギニアで開かれる。米国が参加する中で、保護主義への対抗方針を強く打ち出せるかが焦点になりそうだ。
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【用語解説】東アジア地域包括的経済連携(RCEP)
日本、中国、韓国、東南アジア諸国連合(ASEAN)、インド、オーストラリア、ニュージーランドの計16カ国の経済連携協定(EPA)。関税の自由化や知的財産保護のルール作りを進めている。実現すれば世界の人口の半分、貿易額と世界の国内総生産(GDP)のそれぞれ約3割を占める巨大経済圏となる。