中国「一帯一路」 ラオスで進む高速鉄道建設 地元住民そっちのけ (1/2ページ)

工事が始まって以降、大型トラックが路上駐車を続け渋滞しやすくなった一般道=ラオス北部ルアンパバーン(小堀晋一撮影)
工事が始まって以降、大型トラックが路上駐車を続け渋滞しやすくなった一般道=ラオス北部ルアンパバーン(小堀晋一撮影)【拡大】

  • ラオスのルアンパバーン郊外では巨大な橋桁の建設とトンネルの掘削工事が進められている(小堀晋一撮影)

 東南アジア唯一の内陸国ラオスで、中国政府が進める巨大経済圏構想「一帯一路」による高速鉄道の建設が着々と進められている。雲南省の省都昆明を出発するルートは、同省シーサンパンナ・タイ族自治州モーハンから国境を越えてラオス領内の山岳地帯へと続く。そこから先は70カ所以上あるトンネルや橋を通って首都ビエンチャンへと向かう。総延長約430キロはラオス建国以来、最大の公共工事。経済効果で地元はさぞ潤っているかと思いきや、人々の関心は薄く、盛り上がりにも欠けていた。中国政府の利益ばかりが優先されるラオス高速鉄道計画をリポートする。

 視線の先はタイ

 ラオス北部にある古都で知られる北部ルアンパバーン。敬虔(けいけん)な仏教徒が多い街で知られ、世界最大とされる早朝の托鉢(たくはつ)の様子はガイドブックでも紹介されるほどの世界遺産の街だ。この郊外で今、高速鉄道の橋桁やトンネルを建設する大規模な工事が急ピッチで進められている。

 メコン川に面した猫の額ほどのわずかな市街地から北にわずか15キロ。中国語が書かれた大きなゲートの下を、大型トラックがひっきりなしに出入りしている。中の様子が知りたくて敷地内に立ち入ったところ、監視小屋の警備員が飛んできて撮影を制せられた。タイ語に近いラーオ語なら少しは理解できると思ったが、話しているのはどうやら中国語。後で分かったことだが、働いているのはほぼ中国人だった。ラオス人の雇用は生まれていない。

 総事業費約60億ドル(約6730億円)の7割を中国が負担する。財源のないラオスは中国から4億8000万ドルを借り受け、開業後の収益から返済していく計画を立てている。開通から6年後には黒字になるとそろばんをはじくが、経験のない鉄道運営の見通しに甘さは否めない。農業国ラオスから毎日、新鮮な野菜を鉄道で運ぶとするものの、どれだけの中国人が買うのか、試算の根拠に乏しいのが実情だ。

続きを読む