【主張】英デジタル課税 日本も適正徴収をめざせ

 英国が大手IT企業のデジタルサービスに課税する方針を打ち出した。グーグルやアマゾンなどの米IT企業が国境を越えた事業活動で巨額の利益を上げながら、現行の国際税制では適正に課税できていないことが背景にある。

 欧州連合(EU)で新たなルールを検討しているが、加盟国内の対立で合意はできていない。このため英国は先行して独自課税に踏み切り、国際的な枠組み構築を促す狙いもあるとみられる。

 インターネットによるデジタルサービスは、利用者の増加を背景に急速に伸びている成長市場だ。国際ルールの確立は重要だが、これを待つだけでは公平性を欠き、健全な経済活動に支障が生じかねない。日本もIT企業に対する実効的な課税を検討すべきだ。

 英政府は、2020年4月からIT企業が同国内のサービスで得た売上高に対して税率2%を課税する。世界市場で年5億ポンド(約720億円)以上を売り上げる大手企業の広告や手数料などの収入を課税対象とする。年4億ポンド以上の税収を見込むという。

 EU欧州委員会は今年3月、一定規模のIT企業に対し、加盟国ごとの売上高に3%課税する案を提案した。しかし、低い法人税率で企業を誘致するアイルランドなどが反対している。英政府は今回の課税を暫定措置としてEUが合意すれば、順守するという。ただし合意は難しい情勢にある。

 EUと同様にデジタル課税を検討中の経済協力開発機構(OECD)では、米国が慎重な姿勢を示している。来年の主要20カ国・地域(G20)首脳会議では日本が議長国を務めてデジタル課税を協議するが、米国や中国の反対が予想されている。

 欧米の利害が対立する中で日本はこの問題を主導しなくてはならない。ただ国際合意を優先するあまり、日本が海外IT企業への適正な課税を躊躇(ちゅうちょ)しては本末転倒である。アマゾンは昨年、日本で約1兆3千億円を売り上げたが、日本法人は米本社などに多額の特許料などを支払い、利益を大幅に圧縮して法人税額を減らす動きをみせた。行き過ぎた課税回避は問題である。

 日本は来年10月に消費税増税を予定している。国民に負担増を求める以上、公平な課税という税制の原則にも取り組むべきだ。