【ソウル=桜井紀雄】日本による朝鮮半島統治時代に「強制労働させられた」として、元徴用工の韓国人4人が新日鉄住金(旧新日本製鉄)に損害賠償を求めた訴訟の差し戻し上告審で、韓国最高裁は30日、同社に賠償を命じた2審判決を支持して同社の上告を棄却し、原告請求の全額の計4億ウォン(約4千万円)の賠償支払いを命じる判決が確定した。韓国での戦後補償訴訟で日本企業への賠償命令が確定したのは初めて。
日本政府は請求権問題が1965年の日韓請求権協定で解決済みとの立場で、同社も同様の主張をしたが、最高裁は、原告の個人請求権は協定では消滅していないとの判断を示して退けた。韓国では日本企業を相手取った同種の訴訟が他に14件あり、請求額は計約232億ウォンに上る。他の訴訟でも日本側の敗訴が相次ぐ公算が大きい。日韓の外交・経済関係への多大な影響も避けられそうにない。
戦時下に日本に徴用された韓国人は約22万人いるとされ、新たな訴訟が起こされる恐れもある。
最高裁は判決で「日本による植民地支配や侵略戦争遂行と直結した日本企業の反人道的な不法行為を前提とする強制動員被害者の請求権は、協定の適用対象に含まれない」と判断した。
1940年代に日本の製鉄所で労働を強いられたとする原告らによる今回の訴訟は、1、2審で原告が敗訴したが、最高裁が2012年に個人請求権は消滅していないとの判断を示し、2審判決を破棄。ソウル高裁が13年の差し戻し審判決で企業に賠償を命じ、企業側が上告していた。
最高裁は約5年間、結論を出さなかったが、朴槿恵前政権が対日関係の悪化を懸念して介入し、最高裁が審理を先延ばししたとの疑惑が最近浮上。最高裁側への捜査が行われている。