日中両政府は26日、先端技術や知的財産分野で協力を協議する「日中イノベーション協力対話」の創設で合意した。中国は先端技術を共同で活用することを視野に入れ、日本は対話を通じ日本企業が持つ知的財産権を中国が適切に管理する仕組み作りを狙う。ただ、日本が中国と過度に接近すれば、知的財産権の侵害を理由に対中制裁を発動しているトランプ米政権から反発が出る恐れもある。
中国・北京で会見した安倍晋三首相は「国際スタンダードの上に、知的財産などの分野で両国の協力関係を進化させる」と強調し、中国を公正な国際ルールに引き込みたいとの思いをにじませた。
日中イノベーション協力対話は、事務レベルの初会合を近く開く見通しだ。詳細は今後詰めるが、先端技術では人工知能(AI)や自動運転技術などを念頭に協力の在り方を議論する。対話の設置は中国側が働きかけた。中国は日本と先端技術で連携することで競争力を強化するとともに、貿易摩擦が激化する米国を牽制(けんせい)する思惑とみられる。
日本は技術移転の強要や海賊版の横行といった中国の不公正な貿易慣行を問題視しており、「対話を通じて中国に是正を求めることを米国にも伝える」(政府関係者)方針だ。ただ、トランプ米政権はハイテク産業育成策「中国製造2025」を掲げ先端分野での勃興を狙う中国に強い警戒感を抱いており、日本は米中両国との距離感に苦慮している。(大柳聡庸)