会談する安倍晋三首相(右端)と中国の李克強首相(左端)=26日、北京の人民大会堂(共同)【拡大】
安倍晋三首相は26日、中国・北京で李克強首相、習近平国家主席とそれぞれ会談し、経済や安全保障など幅広い分野での協力強化を確認した。これに先立ち、日中両政府は「第三国市場協力フォーラム」を開き、日中の企業などが両国以外でインフラ投資などを共同で展開するための52件の覚書を締結した。
中国には日中協力をてこに現代版シルクロード経済圏構想「一帯一路」を加速させたいとの思惑もある。安倍首相は両国の企業が「協調」し、アジアのインフラ投資を推進する必要性を強調した。一方でインフラ協力では「開放性」や「透明性」などを確保することが前提になると述べ、中国側にくぎを刺した。
日本企業にとって中国の巨大な市場は依然として魅力的で、特に医療・介護市場はさらに成長が見込まれる。一方、米中貿易戦争の余波や中国独自の規制の影響などで、拠点を他国に移す動きも出ており、各社は難しい経営判断を迫られている。
「一時の厳しさと比べ、融和ムードが高まってきた」
富士通の田中達也社長は日中関係について、26日の決算会見でこう指摘した。同社の顧客となる日系企業の現地ビジネス拡大に期待を寄せ、「(あらゆるモノをネットにつなぐ)IoTやデジタルの分野でも、チャンス到来だ」と話した。
中国では高齢化が進行し、1人当たりの医療費支出の伸びはアジアで最大。国内介護最大手のニチイ学館は昨年末、北京で認知症の高齢者に特化した居住型介護サービスを始めた。車いすメーカーや認知症予防の医療機器メーカーも商機を探る。伊藤忠商事は、資本提携する中国最大の国有複合企業、中国中信集団(CITIC)グループと、中国の病院経営への参画を視野に調査を進める。
金融業界でも、佐藤康博会長が訪中団に参加したみずほフィナンシャルグループ(FG)は、5つの提携を締結。中国工商銀行とは、両国の海外拠点網や金融ノウハウを相互活用して、日中企業の第三国への進出や投資に資金支援やサービス提供などを行う。