日系企業が数多く進出するタイで、2011年以来となる大洪水への不安が高まっている。8月以降、治水用の4大ダムの水位が急上昇し、危険水域や警戒水域を超えているためだ。デジタル経済社会省気象局によると、今後も雨量は増え、雨期が明ける10月ごろまでの総降水量は例年より10%以上多くなる見通し。全国に55ある工業団地を所管するタイ工業団地公社(IEAT)も、洪水への備えを万全とするとともに、入居する日系企業などにも注意を呼びかけている。
主要道で数十センチ冠水
4大ダムのうち総貯水量で2番目に大きい北部プミポンダム(ターク県)を除く、西部シーナカリンダム(カンチャナブリー県)、ワチラロンコンダム(同)、シリキットダム(ウタラディット県)の3つのダムは9月20日の時点で、貯水率が危険水域の80~90%を超えた。大洪水以降、最高の水位で、ワチラロンコンダムでは記録の残る過去34年間で最も水量が多い。治水当局では1日当たり2500万立方メートルのペースで放水を続けている。
しかし、ダムに流入する水の総量はそれよりも多く、日に日に水かさが増している。最大の水がめであるプミポンダムでも水位は上昇しており、貯水率は70%が間近い。「このままのペースでいくと100%を超えるダムが複数出現する可能性がある」とダム当局者も自然相手に打つ手がないといった様子だ。