【ジャカルタレター】副大統領候補者指名、変わる勢力図

2019年4月実施予定のインドネシア大統領選に出馬するプラボウォ・スビヤント氏(左)と副大統領候補者として選挙戦を共に闘うサンディアガ・ウノ氏=8月10日、インドネシア・ジャカルタ(AP)
2019年4月実施予定のインドネシア大統領選に出馬するプラボウォ・スビヤント氏(左)と副大統領候補者として選挙戦を共に闘うサンディアガ・ウノ氏=8月10日、インドネシア・ジャカルタ(AP)【拡大】

 2019年4月に行われる予定の大統領選挙は、前回と同じく現職のジョコ・ウィドド氏(通称ジョコウィ)と、グリンドラ党党首のプラボウォ・スビヤント氏の一騎打ちになることが決まった。8月10日までの正副大統領出馬登録では、副大統領の候補者が誰になるかに注目が集まった。最終的に、ジョコウィは、国内のイスラム団体を統括するインドネシア・ウラマー評議会(MUI)の議長であり、国内最大のイスラム団体であるナフダトゥール・ウラマー(NU)のトップでもあるマアルフ・アミン氏(75)を、プラボウォ氏は、現職のジャカルタ特別州副知事であり、ビジネスマンとして成功したサンディアガ・ウノ氏(49)をそれぞれ副大統領候補として選んだ。

 ◆連立離脱の政党も

 候補者が出そろったことで、各党がどのペアを支持するのかも明らかとなった。連立与党の一角である国民信託党(PAN)は連立から離れ、大統領選ではプラボウォ&サンディアガのペアを応援することを表明した。

 これを受けて、PANのメンバーであるアスマン・アブヌル氏が国家行政改革相を辞任し、代わって国家警察副長官であるシャイフルディンが新たに任命された。

 また、前大統領のスシロ・バンバン・ユドヨノ氏が率いる民主主義者党(PD)も、プラボウォ&サンディアガのペアを応援することを決めた。

 17年の法改正により、国会議員が選出されている政党は、大統領選挙の際、特定の候補者ペアを支援しなければならなくなったため、民主主義者党は、どの候補も応援しないという前回14年選挙のような行動ができなくなったからである。

 ジョコウィが所属し、メガワティ元大統領が率いる闘争民主党を筆頭に、前回選挙ではプラボウォ氏を応援していたが、現在は連立与党として名を連ねているゴルカル党、開発統一党を含め、民族覚醒党、国民民主党などがジョコウィ&マアフル氏のペア支持を表明した。

 一方で、グリンドラ党、福祉正義党、PAN、PDの4党がプラボウォ&サンディアガ氏のペア支持を決めた。

 これにより、18年9月23日~19年4月13日までの長い大統領選キャンペーンに向け各政党は準備に入った。

 ◆ネットで盛り上がり

 テレビ番組はもちろんのこと、インターネット交流サイトのフェイスブックや無料通信アプリのWhatsAppでは、大統領選の話で盛り上がっている。国民による直接選挙で大統領を選ぶというシステムは、政治への関心を引き起こすという点で非常に効果的である。インドネシアは、民主化がスタートしてから20年がたち、04年に直接選挙制になって4回目の大統領選を迎える。

 巨額の汚職や民族・宗教アイデンティティーによる集票など、日本では信じがたい行為も多数見受けられるものの、全国各地で老いも若きも政治の話をし、民主主義が根付き始めていると感じる。制度が整っていないこともあるが、インドネシアでは政治によって成し得る変化、政治リーダーによる改革が目に見えることもあり、政治への期待が大きいと言える。争点となっているテーマに今後注目していきたい。(笹川平和財団 堀場明子)

                   ◇

 「ASEAN経済通信」 https://www.asean-economy.com/