RCEP開幕 妥結の機運高まるも印中となお溝 ネックは“保護主義”


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 30日にシンガポールで開幕した東アジア地域包括的経済連携(RCEP)の閣僚会合では、保護主義的な姿勢を強めるトランプ米政権に対抗するため、年内妥結に向けた機運が高まっている。ただ、個別の分野では、より高水準の自由化を目指す日本やオーストラリアなどと、自国産業の保護を優先させるインドや中国との溝は埋まっていない。

 RCEPは全18分野で交渉が行われ、これまでに実質合意しているのは「政府調達」や「税関手続き・貿易円滑化」など4分野にすぎない。

 日本が重視する「電子商取引」や「知的財産」といったルールや、関税の削減・撤廃を定める「物品貿易」などの分野ではインドや中国などと隔たりがあり、合意に至っていない。

 「対中赤字に悩むインドとの交渉は難しい」。日本の交渉筋はこう嘆く。2017年のインドの対中貿易赤字は、約600億ドル(約6兆6千億円)と全体の4割を占める。関税を引き下げれば安価な中国製品がさらに流入しかねないため、インドは関税の削減で慎重になりがちだ。

 日本は米国を除いた環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)に署名し、RCEPでも「一定の質の確保を前提」(世耕弘成経済産業相)とする。米国との貿易摩擦が激化する中国に歩み寄りを期待するが、知的財産権保護といったルール分野では「まだ日本と相違がある」(政府関係者)のが現状で、年内妥結に向けなお予断を許さない。(大柳聡庸)