日本は「一方的措置の応酬は、どの国の利益にもならない」(政府高官)として、保護主義的な姿勢を強めるトランプ米政権に自制を促してきた。引き続き米国に環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)への復帰を求め、不公正な貿易を続ける中国に日米で共闘したい考えだ。だが、米国が検討する自動車輸入制限が発動されれば日本に与える影響は甚大で、世界貿易機関(WTO)への提訴も視野に入る。日本は米国の出方をうかがいつつ、硬軟両にらみで対応する構えだ。
今月9日、米ワシントンで日米の新しい通商協議(FFR)に臨んだ茂木敏充経済再生担当相は「TPPが日米にとって最善だ」と強調した。TPPは知的財産権保護などで高水準のルールを定めており、米国が復帰すれば中国を強く牽制(けんせい)できるからだ。
しかし、トランプ政権は中国に制裁関税を課し、直接対抗する手段を選んだ。自国の要求を通しやすい2国間交渉を好み、TPP復帰も拒否している。
日本は米国を除いたTPP11、欧州連合(EU)との経済連携協定(EPA)でそれぞれ来年の発効を目指している。さらに日本や中国など16カ国が参加する東アジア地域包括的経済連携(RCEP)の年内妥結も視野に入れる。自由貿易圏を広げることで米国を不利にし、トランプ政権の外堀を埋める狙いだ。