【論風】グローバルデータサプライチェーン 官民が協力して確立を (1/3ページ)

 □東京大学政策ビジョン研究センター教授・渡部俊也

 以前、本欄で欧州連合(EU)の個人情報の保護を目的とした「一般データ保護規則」(GDPR)に関する課題について紹介した。その後5月にこのGDPRが施行され、日本でも個人情報に関する規制についての関心が急速に高まった。企業の対策も進むとともに、政府とEUとの間で相互に個人データの移転を認めることで合意したと伝えられている。

 企業活動のカギに

 一方、個人情報を含まない産業活動に関するインダストリデータについても、中国や東南アジア諸国連合(ASEAN)など一部の国・地域で移転や保存を規制しており、今後他国でも規制の動きが懸念される。背景としては個人情報同様、海外企業が自国内企業のデータを使い一方的に利益を上げることへの懸念もあるものと思われる。

 もちろんグローバル化して各国に事業所や生産拠点を有する企業にとって、現地法人のデータ移転に関する規制は望ましくない。できるだけグローバルにデータ共有を行うことによってより多くのデータ量を確保し、データ解析制度を向上させることで生産性向上が図られる。インダストリデータは、今や原材料などと同じく事業活動に欠かせない。経営資産としての重要度を増すデータについても、モノと同じく、円滑なサプライチェーンをグローバルに確立できるかどうかが企業活動のカギになるのである。

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