愛媛の2ダム規則、豪雨に対応できず 放流量抑制、8年に改定

ダム操作規制の改訂前と改訂後の比較
ダム操作規制の改訂前と改訂後の比較【拡大】

  • 鹿野川ダムと野村ダム
  • 基準量の約6倍に当たる水が放流された鹿野川ダム=9日、愛媛県大洲市
  • 冠水した愛媛県大洲市内=7日

 西日本豪雨で愛媛県の肱川(ひじかわ)上流にある野村ダム(西予(せいよ)市)と鹿野川ダム(大洲(おおず)市)が大量放流した問題で、両ダムの放流量などを決めている操作規則が、記録的な大雨に対応していなかったことが29日、関係者への取材で分かった。より頻度の高い中小規模の洪水を防ぐため、平成8年に事前の放流量を抑える規則に改定されていた。

 西予市と大洲市では大量放流後、大規模な浸水被害が起きるなどして9人が犠牲になった。規則は20年以上改定されておらず、国などダムの管理側は見直しを検討している。

 国土交通省四国地方整備局によると、両ダムは流入量が一定程度になるまでそのまま放流。8年6月の改定で、野村ダムは放流を始める流入量を毎秒500トンから300トンに変更し、放流のタイミングを早めた。

 また改定前は、放流開始後もダムへの流入量に応じて放流量を増やし、その後に固定していたが、改定後は貯水量が4割を超えるまでは放流量を固定、その後増やすようにした。改定で放流する量が減り、中小規模の洪水は起こりにくくなった。一方でダムにたまる水の量は増え、記録的大雨に対応できなくなった。

 この改定には背景がある。7年、下流の堤防整備が十分でなかったため大洲市で浸水被害が発生。住民や自治体から「大規模な洪水ではなく、頻繁に起こりうる中小規模の洪水に合わせた操作にしてほしい」との声が上がっていた。

 同整備局は「記録的な雨では現在の規則ではより危険だと認識していたが、住民の声などから採用していた」と説明。「今回のデータなどを基に検証する。規則は見直さざるを得ないのではないか」としている。