日本悲願の商業捕鯨の再開に向けた機運が高まっている。通常の盛り上がりと異なるのは、9月に開催される国際捕鯨委員会(IWC)の総会で、日本が47年ぶりに議長国を務めるなど3つの好機が重なる「千載一遇のチャンス」だからだ。商業捕鯨をめぐる国際的な議論は30年以上も膠着(こうちゃく)したままだが、日本は事態の打開に向け、議論を主導していきたい考えだ。
「世界に向かってホエール!」
6月7日夕、東京・永田町の憲政記念館にちょっと変わった乾杯の発声が響き渡った。「ホエール(クジラ)」と「ほえる」を合わせた掛け声を挙げたのは、「捕鯨の伝統と食文化を守る会」の参加者たちだ。第30回の節目の会合ということもあり、捕鯨関係者や国会議員など約500人が参加した。
テーブル上には、クジラの肉や皮を使ったさまざまな料理が並んだ。刺し身に竜田揚げ、ステーキ、角煮、カツサンド、しぐれ煮…。いずれも鯨料理専門店や鯨食文化を守る自治体、道の駅、農林水産省が用意したものだ。
IWC総会に対する出席者たちの思いはひとしおだ。議長を務める森下丈二IWC日本政府代表は「IWCの70年の歴史で初めて国際機関としてうまく機能を果たしているか評価を受ける年になる。今までの議論の延長線ではいけない」と気を引き締めた。自民党の二階俊博幹事長も駆けつけ、「恐れることも遠慮することもない。堂々と日本の姿勢を示していこう」と激励した。
そのIWCが商業捕鯨の一時停止を可決したのは1982年。「クジラ資源の科学的知見に不確実性がある」ことが理由だった。