1日に開催されたRCEPの閣僚会合は、年内の大筋合意に向け議論が前進した。経済規模が大きく中心的な役割を果たす日中両国は自由化の水準などをめぐり対立してきたが、保護主義的な姿勢を強めるトランプ米政権への危機感を背景に「呉越同舟」で歩み寄りを見せた。ただ、知的財産侵害など不公正な貿易を続ける中国に日本側の不信感は根強く、今後の交渉次第では“同床異夢”ともなりかねない。
「保護主義への懸念が高まる中、アジアが一丸となって自由貿易の旗を掲げ続けることができるか、世界から注目されている」。安倍晋三首相は会合の冒頭、RCEP交渉の加速を呼びかけた。
日本はこれまでの交渉で、高水準の自由化に慎重な中国に対し、「アジアのスタンダードになりかねない」(経済産業省幹部)と反発。あくまで関税の低減などで質の高い自由化を目指し、必ずしも早期妥結にこだわらない姿勢だった。
だが、日中を含む参加国は米国の保護主義的な政策に対してRCEPという対抗軸を打ち出すため、早期妥結にかじを切った。質にこだわってきた日本は「柔軟性を発揮する」(世耕弘成経産相)と軟化。中国も「歩み寄りの姿勢を見せた」(交渉筋)という。
安倍首相は会合で「知的財産をしっかり保護するルールを整備する」と指摘することも忘れなかった。交渉の中で日本は知的財産権の侵害が目立つ中国を念頭に、海賊版や模倣品の対策などで高水準のルールを求めている。今後の交渉で一定の国にルール整備の経過措置を認めることなども想定されるが、中国と折り合えるかは未知数だ。