日本や中国、東南アジア諸国連合(ASEAN)など16カ国による東アジア地域包括的経済連携(RCEP)の事務レベルでの交渉会合が25日、東京都内で始まった。7月1日に都内で開催される閣僚会合に向けた予備交渉の位置付けで、今月29日まで開かれる。米国の保護主義的な通商政策が鮮明となり貿易戦争の懸念が高まる中、年内の妥結を目指し交渉を加速させる。
菅義偉官房長官は25日の記者会見で、「(事務レベルの交渉会合で)意味ある進展があることを期待したい」と述べた。今回の会合では、「知的財産」や「電子商取引」など合意できていない16分野を中心に協議する見通しだ。既に「中小企業支援」や「経済技術協力」の2分野は合意に達している。
日本の政府関係者は「16カ国の経済発展にばらつきがある中で、合意の道筋を探っていきたい」と語る。日本は米国を除く11カ国による環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)や、欧州連合(EU)との経済連携協定(EPA)の交渉を終えている。RCEPでも7月1日に都内で初めてとなる閣僚会合を開いて交渉を主導し、自由貿易体制の重要性を訴える構えだ。
ただ、高水準の自由化に慎重なインドや中国などと、関税引き下げや貿易ルールなどで高いレベルを求める日本やオーストラリアなどとの隔たりは大きく、交渉は遅れ気味だ。トランプ米政権が鉄鋼やアルミニウムに高関税を課す輸入制限を発動するなど保護主義的な姿勢を強める中で、どれだけ参加国が歩み寄れるかが、今後のRCEP交渉の焦点になる。
RCEPは実現すれば世界人口の半分、国内総生産(GDP)の3割、貿易額の3割を占める巨大な経済圏となる。これまで10回の閣僚会合を開催している。