ただ、中国に対しては、先行きリスクを指摘する声も多い。一つは、トランプ米大統領が強める通商面での対中強硬姿勢だ。
5月初めの貿易をめぐる米中交渉では、米側は中国に対し、2020年までに対中赤字を2000億ドル(約21兆8000億円)削減するよう要求。中国側は、半導体などハイテク製品の輸出制限緩和を求め、激しい応酬を繰り広げた。
さらには米中交渉で、米国は中国の「製造大国」化を警戒し、中国製造2025そのものをやり玉に挙げて、中国政府による補助金給付の即時停止を要求。戦略の頓挫につながりかねない要求に、中国側は猛反発した。
両国は互いに追加関税を課す姿勢も改めていない。今後、両大国間の貿易が滞り、中国経済が悪化すれば、中国に進出している日本企業のビジネスに打撃を与える。日本貿易振興機構(ジェトロ)によると、平成28年10月現在、中国に進出している日系企業の拠点数は3万2313に上り、悪影響ははかりしれない。
このほか、過剰生産が中国製品の価格破壊を招き、中国企業の収益を圧迫。社会保障制度の不備を背景とした将来不安も中国国民の消費意欲拡大の足かせになっている。外交や政治の情勢次第では、日中首脳会談で打ち出された融和ムードが一気に冷えるリスクも無視できない。
日本の「家計」を悪くしかねない中国の動向は、今後も注視が必要だ。(山口暢彦)
国際収支 日本と海外の経済取引の状況を示す指標。輸出入の差し引きである「貿易収支」、旅行者のお金の出入りや企業の持つ特許権の使用料収入などの動向を示す「サービス収支」、対外投資から得た利子や配当の「第1次所得収支」、寄付や贈与の「第2次所得収支」があり、これらを合算した「経常収支」が全体像を表す。経常収支は、日本に入ってくるお金が海外に出ていくお金より多い場合に黒字、逆に入ってくるお金の方が少ないと赤字になる。