不動産投信、日銀が大株主 5%超保有、見直しの声も

 東京証券取引所の不動産投資信託(REIT)市場で金融緩和策として買い入れを進める日銀が、多くの銘柄で保有比率5%超の「大株主」となっていることが8日、分かった。日銀による買い入れは当初、投資を呼び込む効果があると歓迎されたが、相場をゆがめているとして政策の見直しを求める声も出てきた。

 REITは投資家から資金を集めて不動産を取得し、賃料収入を分配する仕組み。日銀は不動産市況が低迷した2010年、デフレ脱却を狙い、包括的な金融緩和の一環で「臨時、異例の措置」として購入を始めた。

 元本割れの恐れがある金融商品を、日銀が買い入れるインパクトは大きく、13年の黒田東彦総裁の就任後も継続し、14年秋には追加緩和に踏み切って、それまでの3倍に当たる年間約900億円のペースにすると決めた。

 今月8日までの累積購入額は4740億円で、夏ごろに5000億円を突破する見通しだ。

 東証に上場するREITは59銘柄。関係者によると、うち20銘柄近くで保有比率が5%を上回った可能性がある。日銀が3月に関東財務局に提出した報告書では、3銘柄で7%を超えた。ただ最近は「買い入れが当たり前になり、市場への明確なプラス効果はなくなった」(野村証券の荒木智浩アナリスト)という。

 REITは売らない限り保有者であり続け、間接的に日銀が全国の不動産の「大家」となっていく構図だ。

 格付けが高い銘柄を選別して買っており、公平性に欠けるとの批判も聞かれる。

 SMBC日興証券の鳥井裕史シニアアナリストは「不動産価格は高くなり、無理に買うことはない」と指摘。急に買い入れをやめると相場急落を招きかねないため年間の購入枠は維持し、相場が下がった際にだけ買い支える方法に切り替えるべきだとの考えを示した。

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【用語解説】不動産投資信託(REIT)

 投資家から広く資金を集めてオフィスビルやマンション、商業施設、物流施設などを購入し、賃料収入や売却益を分配する金融商品。「リート」と呼ぶ。2001年に東京証券取引所でREIT市場が生まれ、個人が不動産に少額から間接投資できるようになった。市場全体の時価総額は拡大傾向にあり、今年4月末時点で約12兆円。