対立は長期化
米国は20世紀初めに世界一の技術国家になってから、技術力で世界の覇権を維持してきている。米国の技術覇権が脅かされるとあらゆる手段を講じて、2番手を追い落としている。
冷戦時代に旧ソ連が宇宙や軍事技術において米国に迫ってくると、軍拡競争に持ち込み、ソ連を疲弊させ、崩壊させたといわれている。
日本が鉄鋼、半導体、自動車などで米国に追い着くと、日本を米国の安全保障の脅威として「第一の敵」と呼び、日米貿易戦争を仕掛け、日本の産業政策を変更させ、日本経済の弱体化をもたらした。
技術覇権の維持は米国の国家願望であり、中国の知財侵害に関してはオバマ政権時代から「スペシャル301条」の優先監視国として警告している。14年には、中国の軍人5人を、米民間企業からサイバー攻撃により営業秘密を盗んだ罪で起訴している。
トランプ大統領は「米国を再び偉大にしよう」をスローガンにしている。そのためには、技術覇権を維持強化することが必須だ。
今回の知財制裁は、単なる貿易赤字の問題ではなく、米国が中国の技術力を脅威と感じたことを示しており、中国製造2025という産業政策の変更が目標であろう。
一方、中国は、製紙法、火薬、印刷術、羅針盤を発明し、世界の技術リーダーであったことを誇りにしている。「中華民族の偉大な復興」を目指している中国は、自国産業を育成する政策目標を変更するわけにはいかない。