【太陽の昇る国へ】米中“貿易戦争”をどう見るか 幸福実現党党首・釈量子

 --先日、障がい者雇用を積極的に進める企業に訪問されたとのことですが

 障がい者雇用で世界をリードする日本理化学工業とオムロン京都太陽を訪問しました。

 ダストレス・チョークを製造する日本理化学工業は、社員85人のうち63人、75%が知的障がい者、そのうち半数近くが重度障がい者です。川崎市の工場では、健常者はサポートのみ、障がい者がラインの責任者となり、1日13万本を目標に生産していました。

 ここは1960年、現会長の大山泰弘氏が、障がいある少女が一生懸命に働く姿に心打たれ、以来「働くことで幸せは手に入る」という人間哲学のもと、障がい者雇用を軸とした経営を続けています。

 厚生労働省によると、全国の福祉作業所の工賃は月額平均約1万5295円(就労継続支援B型事業所、2016年度)ですが、ここでは川崎市の最低賃金に連動した給与が支払われています。

 オムロン京都太陽は、重度身体障がい者を中心に雇用しています。オートメーション機器の部品ラインでは、一人ひとりの障がいに合わせて補助器具を導入し、障がいがないかのような環境を作り出しています。また右手が不自由な人は、左手が不自由な人と一つの工程を分け合うなどして、モノ造りが流れるように進みます。こちらも、徹底した改善運動で初年度からずっと黒字を出し続けてきました。

 「No Charity,but a Chance!(保護するより、働く機会を)」をモットーに掲げ、宮地社長によると、「初めて手にした源泉徴収票を机に飾った人がいる」と言います。

 現在、国会では「働き方改革法案」が議論されていますが、障がい者雇用の現場に来ると、本当に大切なことは何かを教えられます。

 「障害者雇用促進法」により、企業側に一定以上の障がい者を雇用することが義務付けられていますが、納付金を納めることで雇用を避けるケースもあるようです。まずは障がい者に対する正しい理解を推し進め、障がい者雇用に向けた企業間の連携を後押しすることが、幸福な共生社会実現につながることを確信しました。

 --さて、米中間で“貿易戦争”がますますエスカレートしつつありますが、これについてはどのように考えていますか

 日本理化学工業に象徴されるように、働くこと自体に価値があるとの哲学から富を生み出していくのが日本型の資本主義の精神だとすれば、中国には金自体に価値があるという拝金的な精神があるように感じます。昨今、米中間で貿易戦争が激化してきているのも、そうした思想の違いが背景にあるような気がしてなりません。

 今年3月、トランプ米大統領が鉄鋼・アルミニウム製品を対象とする貿易制裁を発表したのを機に、中国が報復措置の実施発表を行い、その後も米中両国がさらなる制裁・報復措置の検討を行うなど応酬を繰り広げています。こうした動きが、世界経済の下押し要因になるとする見方が一部でなされていますが、米国が指摘している通り、中国は米国に対して大幅な貿易黒字を計上しているのみならず、長年にわたって知的財産権の侵害を行ってきたことも事実です。

 熱心なプロテスタントの信仰者であるトランプ大統領から見れば、もうかるなら平気でルールを破る中国の商慣習は、耐え難いものがあるのかもしれません。プロテスタントといえば、勤勉、節倹、正直を旨として、仕事を天から与えられたと考えることで、資本主義の精神を発揮したことは有名な話です。

 従って、トランプ大統領の貿易政策は、単に自国の利益を守るという保護主義的な観点からとらえるべきではないでしょう。

 もちろん、国家の安全保障という重要な観点もあります。元の意図的な切り下げによる輸出促進政策は巨大な米中貿易不均衡を生み出していますが、これは政治的には問題があると断定できるでしょう。

 ほかにも中国の「一帯一路」構想やアジアインフラ投資銀行(AIIB)構想についても、中国の覇権的な意図があるように見えます。その意味でも、トランプ大統領が進めている貿易政策は中国に対する牽制(けんせい)となっており、理にかなっているといえます。

 日本としては、こうした安全保障面の情勢を踏まえながら、堂々と日本の国益を守る方向で貿易交渉を進める必要があるのではないでしょうか。

                  ◇

【プロフィル】釈量子

 しゃく・りょうこ 1969年、東京都生まれ。國學院大學文学部史学科卒業。大手家庭紙メーカー勤務を経て、94年、宗教法人幸福の科学に入局。常務理事などを歴任。幸福実現党に入党後、女性局長などを経て、2013年7月より現職。