--南北、米朝首脳会談開催の合意に続き、先月末には中朝首脳会談が開かれました。北朝鮮情勢についての考えを
対話による解決を期待する向きもありますが、北の非核化が一筋縄でいかないことは明らかです。対話攻勢や東京五輪への参加意思表明など、北の融和姿勢は、米本土を射程に収める核ミサイル完成の時間稼ぎとなる恐れは強いと思います。こうしたなか、トランプ米大統領は安全保障担当の補佐官や次期国務長官に強硬派を据えますが、これは軍事オプション選択も辞さないという意思表示ともとれるだけに、拉致被害者や在韓邦人の保護・救出はもちろん、日本として万全の備えが必要です。
翻って、国会では、学校法人「森友学園」に関する財務省の決裁文書改竄(かいざん)問題が焦点の一つとなっています。しかし、証人喚問などに時間を費やしたところで、政権の求心力低下をもたらす効果はあっても、真相は解明されないのが実情です。真相究明は捜査に任せ、国会では外交や防衛論議に力を注ぐべきだと思います。
--さて、憲法改正に関して、自民党憲法改正推進本部が自衛隊や緊急事態などの4項目についてたたき台となる条文素案を取りまとめました
国家のありようを決める憲法の改正には、局所的ではない、本質的な議論こそが必要です。この観点からは、率直に言って、同案は「改憲のための改憲」にほかならないと思います。安倍晋三政権は長期政権であり、議論に十分な時間を費やせたであろうだけに残念です。
--自民党の素案の問題とは
自民党執行部による自衛隊明記案では、たとえ自衛隊の違憲論争に決着がついたとしても、「戦力」や「交戦権」をめぐる神学論争は続くことになるでしょうし、なにより抑止力の抜本的な強化は期待できません。連立相手の公明党への配慮や、国民投票で通りやすいか否かを優先させた結果なのでしょうが、現状追認の案ではなく、従来の2項削除などの案で公明党を説き伏せ、国民の理解を得るよう努めるのが本来の姿だと思います。
安倍首相はかつて「戦後レジームからの脱却」を唱えていましたが、今回の案では、呪縛は解けず、むしろ戦後レジームを堅持することになるのではないでしょうか。
私たち幸福実現党は、国の独立や国民の生命・安全・財産を守れるよう、9条を全面改正し、防衛軍を組織すべきだと引き続き訴えていく決意です。
また、憲法の平和主義をあたかも信仰のように護持する勢力もありますが、日本の置かれた現実を直視するよう申し上げたいです。9条で国防の手足を縛り続けるのは、日本を危険に陥れるだけであることに気付くべきです。
--その他の改憲項目については
緊急事態への対処は必要ですが、憲法への明記は内閣への権力集中、自由の制限につながりかねず、慎重であるべきです。また、参院の合区解消に関しては、自民党が選挙対策や党利党略を優先させているのは明らかです。衆参の役割分担、参院のあるべき姿に関する議論とセットで検討すべきです。
教育無償化については、財源論で反対が強いことから明記は見送られ、結果、教育環境整備の努力義務を国に課す案に落ち着いたようです。しかし、教育の機会均等は憲法や教育基本法に盛り込まれており、さらに書き込む必要があるのか疑問です。教育無償化明記を求める声もありますが、教育に対する国の関与を強め、社会主義化に拍車をかける恐れが強く、賛同できません。貧困が学びの機会を奪っているのは確かですが、これは奨学金制度の拡充などで対処できると思います。
いずれにせよ、場当たり的な改憲では、将来に禍根を残すことになりかねません。9条や統治機構のあり方を含め、いかなる国家を目指すのか、グランドデザインをしっかりと描き、独立国家にふさわしい憲法に創(つく)り直すべきです。
◇
【プロフィル】釈量子
しゃく・りょうこ 1969年、東京都生まれ。國學院大學文学部史学科卒業。大手家庭紙メーカー勤務を経て、94年、宗教法人幸福の科学に入局。常務理事などを歴任。幸福実現党に入党後、女性局長などを経て、2013年7月より現職。