【論風】安倍政権、目に余る「官邸主導」 民主的な政策決定に回帰を (1/3ページ)

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 □一橋大学名誉教授・石弘光

 「安倍1強」の下、政策運営は従来のように党や既存の審議会の議論を経ることなく、安倍晋三首相の意向を受け官邸主導で進められている。消費税の使途変更、教育無償化、出国税、企業拠出金など最近の目玉政策は、押しなべて官邸主導の決定である。所得税・法人税改革でも、党や財政当局でいったん決着した案件が官邸の独断で覆ったこともある。さすがにこの官邸主導の政策決定に、昨年来、自民党などから不満の声も高まってきた。

 例えば、首相が衆議院選挙で打ち出した教育無償化などの制度設計をした橋本岳厚生労働部会長は「部会長として反対だ」と言ったのに党の選挙公約になってしまい、これなら部会は不要だと抗議している。また幼児教育無償化などの財源をめぐって経済界に負担を要請した直後に、小泉進次郎副幹事長から「このまま自民党は必要ない」と公然と批判の声を上げている。

 審議会が形骸化

 選挙で国民の支持を得たのだから、首相が好きなようにやればよいとの声もある。しかし初めから個々の政策について国民や関係者の声も聞かず、首相の独断で決めてよいはずがない。首相は専制君主ではないのだ。代議制民主主義の下、国民の声は選挙で選出された議員の活動を通じて国会に届けられる。その意味で政党の中での審議や国民の代表を集めた審議会の答申は、国民の声を代弁している。このルートを一方的に遮断し、重要な政策課題を勝手に官邸で決めるのは民主的な過程を踏みにじるものだといえよう。

それ以外にもいくつかの問題がある