今年は元号が明治となって150年。それもあって歴史を旗印にして、観光客を呼び込もうという動きが活発化している。その一方、「危機を突破した先達に学ぶ」として、地域再生のきっかけにしようという取り組みもある。
◆スタンプラリー
観光を前面に打ち出しているのが2015年から活動を始めた「平成の薩長土肥連合」だ。官軍の中心として活躍、明治維新後は多彩な人材を輩出した鹿児島、山口、高知、佐賀4県の知事が合同で地域の歴史を売り出している。
具体策として「薩長土肥スタンプラリー」がある。各県3カ所ずつ計12カ所の観光施設を巡れば、制覇賞が抽選でもらえる仕組みだ。山口県の担当者は「単独でPRするよりも、広域で連携する方が、ストーリー性もあって、認知度は上がっています」と分析する。
同じネットワーク型には、大政奉還150周年を記念して昨年の1年間、福島県会津若松市や静岡市、山口県萩市など全国の22都市が参画して開催されたスタンプラリーもある。
キャッチフレーズは「日本の『大転換』を体験しよう!」。100人を超える歴史好きな人らが22カ所のスタンプを集め完走したという。
これら自治体が参加した「幕末サミット」は昨年10月、大政奉還の舞台となった京都市の二条城近くのホテルで開かれ「歴史に学び、地域でつながり、未来に活かす」とする二条城宣言を採択している。
◆維新博や御楼門再建
鹿児島県内では昨年4月から「かごしま明治維新博」と銘打ったイベントが各地で始まっている。鹿児島市内の「維新ふるさと館」の近くには「明治維新150年」というのぼりも目立つ。
今年の大河ドラマは西郷隆盛を主人公にした「西郷どん」。まさに追い風を受ける鹿児島県は、今年5月に記念式典を開く。「少しでも早く維新博を浸透させ、さらなる観光客の誘致につなげたい」と意気込む。
同時に魅力的なまちづくりの機会とも捉えている。鶴丸城にあった御楼門の再建に着手、シンボルとして20年3月の完成を目指す。幕末史を研究する若手を支援する事業もある。「この時期の志、行動力を学んで今後の鹿児島にどう生かすのかが課題です」と、狙いが観光だけではないことをアピールした。
「地域振興の機会にしたい」と話すのは栃木県だ。「日光市の中禅寺湖畔は外国大使館の避暑地としてにぎわいました。今春はJRグループによるデスティネーションキャンペーン先にも選ばれており、相乗効果を期待したい」。日光田母沢御用邸記念公園にある皇后御学問所を特別公開するほか、日光が西洋流の動植物研究の一大拠点となったことを伝えるテーマ展を県立博物館で開く。
◆先達の軌跡学ぶ
京都は維新後、天皇が東京に移ったため都の地位を失い、わずか数年で人口の3分の1が減少した。この最大の危機を突破するため、番組と呼ばれた地区ごとに町衆が国の学校制度に先立って「番組小学校」を創設、日本初の芸術大学や公立の工業高校も創立された。事業用水力発電などのため琵琶湖疏水も整備されている。
「これら数々の取り組みもあって、今日の発展の礎が築かれました。その奇跡と軌跡を学びたい」と京都市の担当者。今年1月7日には「明治150年・京都の奇跡プロジェクト」のキックオフイベントを開いている。
「人口減少、高齢化が深刻な時代となった今こそ、当時の京都人がどう動いたかを知って未来につなげていく」とし、市民参加のイベントを続けていく方針だ。
同じ危機感を持つのが兵庫県だ。掲げるのは「県政150周年」。幕府の直轄地を管轄する第1次兵庫県から廃藩置県、府県統合を経て1876年に摂津、播磨、但馬、丹波、淡路の5国からなる現在の姿となった。
「5つの地域が持つ独自の文化や自然、産業など地域の魅力を磨きながら、2030年を見通した進むべき方向を示したい」とし、住民参加でまとめる長期ビジョンが最大の成果と位置付けている。