地銀、人材紹介業が可能に 金融庁、指針改正案を公表

 金融庁が、地方銀行の業務として人材紹介業が展開できるように規制を緩和する方針を明らかにした。人手不足が深刻になる中で、取引先企業が必要とする人材の確保や雇用問題の解決を手助けし、地域経済の活性化に貢献できるようにする。低迷する地銀の収益力向上につなげる狙いもある。銀行の業務運営に関する考え方をまとめた監督指針の改正案を23日、公表した。

 銀行の業務範囲は厳格に定められている。低金利による採算悪化といった銀行の経営環境の変化や地銀からの要望を踏まえ、金融庁は規制緩和が必要と判断した。ただ規模の大きい銀行の安易な業務拡大は、他業種の経営を圧迫する恐れがあり、慎重な運用が求められる。

 改正案では、地元企業の支援につながる事例の場合、地銀が手数料を取って人材紹介業を担えることを明確にする。地銀は、豊富に保有している取引先企業の情報を活用し、人手不足解消に取り組むことができるようになる。

 例えば、地元企業の工場が閉鎖した場合に仕事を失った従業員を他の取引先に紹介したり、新たな事業を立ち上げる場合に取引先の中から必要な人材を探し出したりすることが業務として可能になる。

 政府系の人材紹介会社「日本人材機構」や民間の人材紹介業者と連携し、地域の中小企業で不足している海外展開や生産性向上、企画、人事部門といった専門的な能力を持つ人材を全国規模で募集し、紹介することも期待される。

 金融庁は昨年、地銀の保有不動産を保育所向けなどに賃貸できるように監督指針を改正した。金融庁幹部は「地銀は取引先の経営課題を解決する役割が求められている」と強調している。今後も地域の企業の価値向上につながる規制緩和を進めていく考えだ。

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【用語解説】銀行の業務範囲規制

 銀行経営の健全性を保つために課されている、原則として銀行業以外の兼営を認めないという規制。本業に専念させることで取引先情報の悪用を防止し、経営が悪化するリスクを回避する狙いがある。ただ、銀行を取り巻く経営環境は変化し厳格な運用が難しくなってきており、規制は徐々に緩和されて業務範囲は拡大する傾向にある。