インドで最も貧しい地域の一つ、北部ウッタルプラデシュ州で、太陽光発電を利用した「地産地消」型の電力供給システムの普及が進んでいる。小規模の発電・蓄電施設から独自の送電網を使い消費者に届ける仕組みで、電気が届いていなかった農村地域にも供給が可能になり、住民の生活に変化をもたらしている。
「料理や子供たちの勉強に、電球の明かりを利用している」。同州ラクノー郊外の小さな集落に住むアニシャさんは、壁に据え付けられた発光ダイオード(LED)電球の下で笑顔を見せた。集落には電気が通っていなかったが、2015年に近くの太陽光発電施設から送電が始まり、契約した。LED電球2個とコンセントが提供され、午後6時から午前0時まで電気が届けられる。
毎月の電気代は170ルピー(約300円)。縫製業のアニシャさんの月収は約3000ルピー。4人の子供を養い、生活は楽ではないが「ランプの油代より安い。生活も便利になった」と話す。
こうした電力を供給しているのは、北部ハリヤナ州に本社を置く電気事業者、OMCパワーだ。現在、ウッタルプラデシュ州内に85カ所の発電施設を持ち、9100世帯に電気を届けている。
17年8月には三井物産が約10億円を出資。19年3月までに発電施設を250カ所に拡大する方針だ。
インドでは人口約13億のうち約3億人が電気のない暮らしを強いられているとされる。大規模な発電所を建てても、送電網が貧弱で広範囲な供給は難しい。
そのため地産地消型の電力供給システムが注目されている。電気を供給できるのは、発電施設から半径1.5キロ程度の範囲だ。ウッタルプラデシュ州政府は運営費の2~3割を補助する。
インド三井物産の八木浩道社長は「小口の契約者は今後どんどん増えていく。発電施設の数も、中長期的には1000カ所まで増やしたい」と意気込んでいる。(ラクノー 共同)