安倍晋三政権が重要政策に掲げる「生産性革命」の実現に向け、政府は19日、災害時を含めた安定的な道路物流網確保を目的とした新たな政策パッケージを創設する方針を固めた。物流上重要な幹線道路などに対し、大型トラックの通行規制緩和や災害時の復旧迅速化などを図る。ドライバーの高齢化などに伴う人手不足へ対応するほか、災害や慢性的渋滞による経済損失を最小限にとどめる。
新政策パッケージ「重要物流道路制度」は都道府県庁や拠点空港、重要港湾など、平時や災害時の物流拠点を結ぶ幹線道路・アクセス道路について、国土交通相が「重要物流道路」に指定。必要な機能強化や支援策を実施する。22日召集の通常国会に、制度の規定を盛り込んだ道路法など関連法改正案を提出する。
具体策の一つは大型トラックの通行規制緩和。40トン級の国際海上コンテナ車について、長さや高さなどが規定範囲内ならば通行許可を不要とする。これまでは一般的に20トンを超える大型車は許可が必要だったが、取得に1カ月以上かかるケースも少なくなく、突発的な物流需要へ対応が難しかった。
激甚化する災害時の物流機能を確保するため、重要物流道路は被害規模が比較的小さい場合でも、国が地方道部分の災害復旧を代行できる新たな規定を道路法に盛り込む。大規模災害では大規模災害復興法などに同種規定があるが、小規模の災害でも物流網の復旧を迅速化できるようになる。
また、渋滞での物流生産性低下を緩和するため、道路財特法に民間企業の負担で高速道路のインターチェンジから物流拠点につながる重要物流道路を新たに整備する際、政府が無利子貸し付けできる規定を盛り込む。
トラックドライバーは50歳以上が約4割を占めるなど高齢化し、有効求人倍率は2倍を大幅に上回るなど人手不足が進む。安定的な物流網確保には輸送効率化が不可欠だが、現行法ではトラックの大型化や渋滞への対応が不十分だった。熊本地震では熊本県内の約50カ所で主要道路の通行止めが発生しており、災害への備えも急務だった。