【高論卓説】まとまらない受動喫煙対策 飲食店保護がビジネス変換を妨げ (1/2ページ)

 他人のたばこの煙を吸い込む受動喫煙対策を強化する健康増進法の改正論議が一進一退だ。飲食店内は原則禁煙(喫煙専用室設置は可)、店舗面積30平方メートル以下のバーやスナックに限り喫煙を認める厚生労働省の当初案が、飲食店が廃業に追い込まれるという理由で、既存飲食店150平方メートル以下で線引きされようとしている。

 そもそも、健康被害の恐れがある問題を、既存飲食店の既得権益の問題として議論することに、違和感を覚える。健康被害の恐れがあるのでその食品を摂取したくないと思っている人に、既得権益を守るために摂取せざるを得ない状況を認めろと言っているようなものだ。

 個人の嗜好(しこう)の良しあしの問題に踏み込むつもりはない。個人の嗜好は個人が楽しめる場所で享受すればよい。しかし、それが公共の場で行われて他の人にネガティブなインパクトを与えるのであれば、制限されることは当然だ。公共の場で、公共の福祉が優先されることに異論を持つ人はいないだろう。

 飲食店が廃業に追い込まれるから、喫煙を認める線引きを緩めるということだが、禁煙で売り上げは落ちると決めつけていないか。海外では売り上げが伸びたケースもあるという。ホテル予約の際に残り少ない空き室が喫煙ルームだった経験を何度もしていることを踏まえると、禁煙推進が飲食店ビジネスを悪化させるとは限らないのではないか。

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