【ソウル=桜井紀雄】トランプ米大統領は訪韓中、盛んに韓国を持ち上げ、韓国の頭越しに日中首脳とだけ北朝鮮問題を論議する「コリア・パッシング」は「ない」と明言した。だが、文在寅大統領との2者会談は30分に満たず、ビジネスライクな姿勢を隠しもしなかった。安倍晋三首相との“蜜月”との格差を図らずも浮き彫りにした。
トランプ氏が8日の国会演説で「世界4大女子ゴルフ選手は皆、韓国出身だ」と韓国女子プロゴルファーの活躍を称賛すると、議場は拍手に沸いた。「奇跡」の経済発展など韓国をたたえるのに言葉を惜しまず、拍手は20回を超えた。
演説前には、前大統領、朴槿恵被告の釈放を訴えるプラカードを持ち込もうとした議員が警備員につまみ出される一幕もあった。
国会前では、トランプ氏の訪韓に反対する団体が「韓国から出ていけ!」と叫んだ。反対派はトランプ氏の行く先々でデモを計画したが、2万人近い警察を動員し、トランプ氏の目にとまらないよう力で押し込めたのが現実だった。
文政権を悩ませたのは親米・反米に二分した国論だけではない。拉致被害者家族との面会を実現させ、対北圧力で一枚岩を見せつけた訪日と比べ、1泊だけの訪韓に不満を抱く韓国世論の突き上げを受けていた。
文氏の提案で、トランプ氏は8日早朝、南北軍事境界線がある板門店の非武装地帯(DMZ)のサプライズ視察を試みたが、悪天候で断念。先回りしていた文氏が待ちぼうけを食った。