やれラーメンだ、やれすしだ。グルメ、グルメで気楽に暮らす日本人には想像に難しいが、世界ではいまだに約10億人の人々が飢餓や栄養不足で苦しんでいる。食糧不足の原因はいくつかあるが、激増する人口に供給が追いつかないことが一番だ。さらに中国など経済発展の結果誕生した中間層の食の好みが菜食から肉食に傾向していることも大きい。
牛肉1キロを生産するためには11キロの餌を牛に与える必要がある。特に日本のように放牧ではなく厩舎(きゅうしゃ)飼育では、牛1頭つまり200キロの牛肉を生産するために2.2トンの穀物を与える必要がある。2.2トンの穀物とは人間8人分の1年間の食に匹敵する。本来なら人間の食べ物であるべき穀物が家畜の餌に回され人が腹をすかせる。皮肉な結果だ。
また、先進国では食品破棄という問題も抱えている。日本だけでも年間2700万トンの食べ物が生産現場、流通、レストラン、家庭で捨てられており、これは約1億人が1年間暮らしていける食糧と同量である。同じ地球上で、一方では食糧不足に悩み、他方では食べ物を捨てている。愚かなことだ。
農学博士の山川理さんは過去40年間、サツマイモの品種改良に取り組んできた。農林水産大臣賞などを受賞した世界に知られたイモ博士である。デンプン質を多く含み保存が利くイモは世界中で食されており、日本人も戦中戦後の食糧難の時代をサツマイモに救われた経験がある。