だが、招致段階で見込んだ予算の膨張に歯止めはかからない。20年五輪を開催する東京は「売り」だった「コンパクトな会場計画」を崩してまで圧縮に取り組むが、予備費を除いても総費用の試算は1兆3850億円まで増大した。
五輪のイメージ悪化を避けたいIOCは「まだ削減できる」と東京都や大会組織委員会に迫る。準備状況を監督する調整委員会のコーツ委員長も「(五輪に)怖くて近寄れないというのではなく、立候補してもいいと思えるようになることが大事」と焦りを隠せない。開催する側にコスト削減を求めるIOCには冷ややかな視線も注がれる。IOC関係者は高級ホテルに滞在し、五輪レーンを専用車で移動するVIP待遇。24年五輪開催を目指すパリを5月に視察した際には、記者会見で世界有数の公共交通網を評価したIOC委員に「コスト削減とIOCのイメージ向上のために、自分たちも公共交通機関で移動したらどうか」と厳しい質問が飛んだ。
経済的リスク負わず
IOCは7月の臨時総会で、24年五輪招致を争うパリとロサンゼルスを24年と28年の2大会に振り分ける異例の開催都市同時決定案を承認した。開催能力が高く、財政基盤も強固な両都市を確保して将来のリスクを回避する秘策に、バッハ会長は「2都市とIOCの3者のいずれにも利益のある状況をつくりたい」と期待を込める。
しかし、大型事業を研究する英オックスフォード大大学院のフライフヨルグ教授は、2都市同時決定は五輪離れの根本解決にはならないと指摘する。「IOCはアジェンダ2020があると言うが、開催費用に関しては何も効果的なことを講じていない。経済的なリスクも負っていない。IOCも開催費用に責任を持たなければ、いずれ立候補する都市はなくなる」と警鐘を鳴らした。