トランプ米大統領は22日、カナダのトルドー首相、メキシコのペニャニエト大統領と近くそれぞれ直接会談すると述べ「北米自由貿易協定(NAFTA)の再交渉を始める」と宣言した。ホワイトハウスで開かれた高官の就任宣誓式で語った。大統領就任後にNAFTA再交渉に言及するのは初めて。
離脱なら農業打撃
トランプ米大統領は、NAFTAにより人件費が安いメキシコに米企業が生産拠点を移し、米国の産業空洞化を招いたと主張する。
だが、自国に有利な条件ばかりを突き付けて再交渉をまとめるのは容易でなく、協定から離脱すれば米国が悪影響を受ける恐れもある。トランプ外交が最優先に掲げる公約の実現には高いハードルがある。
米東部から中西部の「ラストベルト(さびた工業地帯)」と呼ばれる地域では鉄鋼や自動車などの主要産業が衰退。労働者が不満を強め「NAFTAの再交渉か脱退」を掲げるトランプ氏を強く支持し、大統領選でのトランプ氏勝利の原動力となった。
だが、米国は1994年のNAFTA発効後、メキシコへの農産物輸出を拡大しており、離脱すれば農家が打撃を受けるのは必至。両国間で関税が引き上げられれば、米国に輸出するためメキシコで生産する米企業の業績を悪化させる。
多くの日本の自動車メーカーが米国に完成車を輸出するためメキシコに工場を構えており、NAFTAの行方は日本企業の戦略にも影響する。