このように、ベトナムでもITを活用した金融サービスは急拡大しており、16年の国内フィンテック取引総額は約53億ドル(約6224億円)だった。国内フィンテック市場は今後さらに拡大し、20年には約113億ドル規模に達すると予想される。
現在、フィンテック市場のおよそ99%を電子商取引(eコマース)が占める。国内で起業したフィンテック関連企業は、39社のうち22社が電子決済サービスなどを主業務としている。現金の入った財布に代わって、スマートフォンなどの携帯端末を支払いに活用できるeウォレットサービスの「MoMo」で知られるM-Service JSCは、全国63省のうち45省で約150万人のユーザーを抱える。同社は3月に、スタンダードチャータード銀行と米ゴールドマンサックスから計2800万ドルの融資を受け、国内事業の拡大を目指している。
◆規制緩和と法整備
国内のフィンテック市場が拡大する一方で、発展の障壁となりうる問題も残されている。その一つが、法整備の遅れだ。現在の法制度では、基本的なeコマースに関する規制は存在するが、ITを使った資産運用といった金融サービスに関する法律はまだ整っていない。また、政府による国外送金の規制や、既存の銀行などが金融サービス市場で絶大な力をもっていることも、ITベンチャー企業が中心となって展開するフィンテック産業の発展の障壁になると考えられる。