バラスト水は、積み荷のない状態でタンクに注入し、荷積みの後に排出する。タンク容量は荷物の種類によるが、液化天然ガス(LNG)船の場合、積載可能貨物量の約8割に上るなど、航海ごとに数万トンの海水が移動することもある。停泊地で注入する海水には細菌やプランクトンなどの生物が混じってしまう。1980年代以降、欧州に生息する貝が米国で異常繁殖して発電所の取水口を詰まらせたり、黒海に侵入したクラゲが魚の餌になるプランクトンを食べて漁業に影響を与えたりする例が相次ぎ、問題化した。
国際海事機関(IMO)は2004年、船にバラスト水処理装置の搭載を義務付け、海水中の生物や細菌数を規制する条約を採択。今年9月時点で、締結した52カ国の商船のトン数合計が世界全体の35%超となり、条約で定めた要件をクリアしたため、1年後の来年9月の発効が決まった。
IMOによると、対象は世界で約7万隻。日本は14年に締結し、国交省や海運会社によると、対象の日本関係船は1000隻を超える。
海運大手の川崎汽船では、装置を搭載したのは約200隻のうち20隻程度。同社技術グループの池田真吾氏は「負担は大きいが、企業として環境保護に積極的に関わるため、計画的に搭載を進めたい」と話している。