【シンガポール=吉村英輝】トランプ次期米大統領が就任当日に環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)から離脱する意志を明確にしたことで、“翻意”を期待してきたアジア太平洋の参加国には落胆が広がった。米国のTPP離脱が決定的となり、自国利益の確保へ独自の対応を加速させる構えだ。
「急成長するアジア市場にどう関与するのか、いずれ米国は考えたくなるだろう」。参加12カ国中で唯一、TPP関連法案を今月15日に議会で可決したニュージーランドのキー首相は22日、トランプ氏に対する失望を隠さなかった。
キー氏はアジア太平洋経済協力会議(APEC)の首脳会議が開かれたペルーで、TPPの略称をそのままにして名称を「トランプ太平洋連携協定」に変更する案まで出し、残留を呼びかけた。だが、状況が厳しいと判断したのか、21日には来年前半に中国と自由貿易協定(FTA)の協議に入ると発表した。
トランプ氏の態度が変わると「楽観」していたオーストラリアのターンブル首相は22日、米国の新政権と新議会の対応は「時間が来れば分かる」と冷静な対応を強調。シンガポールのリー・シェンロン首相もTPP批准に向けた法改正を来年初めに行い、米国内の議論を見守る姿勢だ。
一方、マレーシアのナジブ首相は、米国の政策決定権は選挙で新大統領に委ねられたとして、安保や成長戦略で「共通の目標に取り組みたい」と、トランプ氏に歩み寄る姿勢をみせた。